続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

イタイは正義

イタイという言葉がよく使われる様になったのはいつ頃だろうか。

 

100%ネガティブで嘲笑的なニュアンスしかない言葉で、馬鹿にするときに使われる言葉だ。

 

嫌な言葉である。

 

今プロレス界で随一のイタイ選手といえば、スターダム所属のコズミックエンジェルズの面々だろう。

 

リーダーの中野たむは宇宙一かわいいを標榜してSNSでもブリブリな写真をあげている。

 

白川美奈はグラドルとしては正直あんまりうだつが上がらない中でプロレスに入り、ハイテンションで場をかき乱し続けている。

 

ウナギ・サヤカはこれまでも色々とやらかしており、明らかに自分よりも上のキャリアの選手に向かって「お前誰だ!査定してやる!」などと喚いては顰蹙を買っている。

 

そして月山和香はデビュー通算でも未だ勝ち星がなく、年下にも後輩にも負けまくっている現代の最弱レスラーだ。

 

こんな4人だが、昨年ベストユニット賞とやらも取っている。

 

私は正直彼女らが出てきた時、なんだこいつらはと思っていた。

 

テンションばかり高くて肝心のプロレスが今一、飛び道具的なことばかりやっていて無駄に色気を出している。

 

いやいや、他にやることあるだろと思っちゃうよね。

 

 

しかしである。

 

最近彼女らが面白い。

 

中野たむはもはや言うまでもなく、気がつけば団体でも随一の狂った奴に成長している。

 

キャラクタに埋もれがちだが、試合自体は毎度顔面をボコボコに腫らして、せっかくのメイクもぐずぐず、試合後の表情があまりに満身創痍すぎて心配になるくらいだが、その全力具合はどうしたって伝わってくる。

 

また白川美奈はもとよりクソがつく真面目さが隠せない一方で、根っからのプロレスファン、ていうかライガーマニアを隠そうともしない。

 

何より中野たむを凌ぐ全力疾走、突き抜けたそのやりきりっぷりが、個人的には1番面白い。

 

やるしかねぇぜ!というのが悲壮感ではなく気持ちよさとして伝わってくるのがすばらしい。

 

ウナギはプロレス的な課題はまだまだ大きいが、大物にも食いついてボコボコにやられている様はなかなか魅力的である。

 

正直1番苦手なタイプだったけど、ここ半年くらいはもう翻っておもしろくなってきた。

 

そして月山、根っからの育ちの良さが隠せず、間違いなくいい子だろうし、多分努力もすごくしているんだろう。

 

その肉体なり動きを見れば、それは誰の目にも明らかだろう。

 

しかし勝ち星に恵まれない。

 

プロレスなので色々のことはあるけど、流石に見ていて切なくなってくる。

 

 

スターダムはどの選手にもそれぞれに必死さが常にあるのが最近見ていて改めて感じるところではあるんだけど、他の選手に比べてこのユニットはそれが特に際立っている様に感じる。

 

あまりいいアングルではないけど、年齢的にも30歳を過ぎたメンバーが多く、10代の選手も多く存在する女子プロレスにあっては明らかに人気を呼び込む意味でも向かい風が強い選手たちだ。

 

そもそもプロレスデビューも遅かった選手が大半なので、スタートラインからなかなかのハードルだっただろう。

 

女性の方がそもそも筋肉量も少ない分、そのハードルは大きいからね。

 

 

でも、プロレスの面白さって私に取っては人生というアングルなんだけど、まさに彼女らにはそういうものがあるんだよね。

 

なんだかんだ元々の3人はすでに人気も立ち位置もある程度確立できている。

 

まだまだおっさん人気ばかりなのはセクシー路線で売っているが故の弊害だろうが、本当はもっと女性ファンのついているべきユニットだと思っている。

 

そして月山である。

 

実力的に劣っているかといえばそんなことはないだろうが、そこはプロレスである。

 

プロレスであるが故に切なくもなる。

 

だけど、これだけ負けが立て込めば、いつ、誰に勝つかだし、その後はちょっとやそっとじゃ揺らがない存在になれるはずである。

 

それこそ同列にいる同期や新人ではなく、団体トップクラスから取ってなんぼだ。

 

人生で変化が訪れる瞬間なんて、地続きだけど事件は一瞬である。

 

そんなことを密かに期待しながら見ている。

 

ここまできたらジャイアントキリングしかないだろ。

 

 

さて、先にも書いたけど私にとってプロレスを見るアングルは人生である。

 

魅力的なプロレスラーは、その試合なり技なりにそのレスラーの生き様が映し出される。

 

今は変にプロレス=エンタメだから(笑)みたいな感じで見ているファンは少なくないし、選手の側もそんな感じが見て取れる。

 

だからつまらないなんていう単純な話にはならないけど、私はそういうのってちょっと物足りないなと感じてしまう。

 

元々あんまり好きじゃなかったコズエンが最近なんだか面白いなと思う理由ってそういうところにあって、フィクションとノンフィクションの境目みたいなものが見える瞬間が1番面白いのだ。

 

アイドルも色々やって、つまるところこれしかねぇ!ここで爪痕残さねぇとどうしようもねえ!みたいな必死さが、人によってはイタイと写るのかもしれないけど、それこそが人生だろ。

 

そんなにかっこよく生きていられないし、綺麗なものなんてほんの少ししかない。

 

持って生まれた才能には差があるし、その天才が同じだけ努力してきたら凡人はなりふり構っていられない。

 

かっこ悪かろうがダサかろうが、必死こいてやるしかないんだよ。

 

大体において、世の中のほとんどに人は夢に描くようなかっこいい感じにはなれてないし、漫画の主人公にもならないような、ダサい生き方ばっかりだろう。

 

綺麗になんて生きていられないよ。

 

私もできればクールにカッコよく、女の子にもモテモテで、仕事もバリバリこなしてハハハと高笑いしている人生でありたかったが、現実には日々あくせくして、ちっともかっこいい場面なんてないよ。

 

それでもやっていくしかないから必死こいている訳だが、だからこそイタイと言われてしまう人って笑えないんですよ。

 

見栄はってでもハードルをあげて、自分の理想を虚像でも作り上げて、そこに向けてフンギギギ・・・とか言いながらやっていくしかないのよ。

 

カッコよく生きていたかった・・・

 

 

そんな個人的な感情もあって、馬鹿にできないんですよ。

 

さすがにここまでドヤサ!と主張してくる人は苦手なので初めは?と思っていたけど、彼女らは面白い存在だよね。

 

引き続きイタサ全開で世にはばかってほしいところだ。

 

それこそがプロレスラーだろ。

 

必死さってのは笑えないよ、最高だよ。