続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

ベテランvs若手、ただの世代闘争じゃないのが面白い - NewBlood

私個人としては度々書いているのだけど、プロレスの面白さの最たるものはレスラーの人生が見えることだ。

 

プロレスはプロレスだからプロレスなんだけど、いいレスラーは須く試合にその生き様が現れる。

 

私は昔から柴田とKENTAが好きなんだけど、彼らの試合にはそれが出ている。

 

覚悟が出ているし、そこに気迫が宿っている。

 

プロレスはまさに人生だと思っているのだけど、その人の人生が出ていて、やっぱりそういうレスラーの試合は感動する。

 

 

今や一つのブランドにもなったスターダムのNewBloodという大会だが、今回で8回目だそうだ。

 

元々は当時デビューした期待の新人、天咲のための大会みたいな感じで始まったが、今はいい感じにそことは離れている一方で、そろそろブランディング的に難しい局面にもなってきているが、とはいえ若手主体というテーマは一つ通底しているだろう。

 

毎回Youtubeで無料配信してくれるのでとてもありがたいのだけど、今回の大会は非常に印象的な試合が多かったですね。

 

天咲は今回も出ているが、メインではなく5番勝負として渡辺桃と戦う。

 

結果、桃のうまさの光る試合だったと思うけど、まだまだこれからだ。

 

奈七永とルアカの試合もよかったし、壮麗から見事ベルトを奪取した吏南もよかった。

 

双子の妹のヒナもお姉ちゃんの羽南もよかったしね。

 

てか、羽南デカくなったな。

 

 

そして意外にも個人的に感動してしまったのが、メインとたむvsたむ。

 

意味不明だろうが、元アイスリボンの石川奈青がまさかの参戦、しかも中野たむとして登場したのだ。

 

石川は、私が見ていた時には怪我で欠場していたので、実はそんなに試合はアイスリボン当時は見たことがなかった。

 

しかし、誌面ではアイドル的な活動をしたり、過剰にぶりっ子してみたりと、独自路線で活動をしながらも、先日アイスリボンを退団。

 

記者会見では辛辣なフロント批判をぶちまけ、最後のリングでは社長をぶちのめすというなかなかのインパクトを残して外へ飛び出した。

 

そこからまさかのスターダムに参戦、しかも初戦がサブブランドとはいえメインだ。

 

相手は現役の王者、中野たむだ。

 

賛否の大きな選手の一人だが、元々は花月ありし頃の大江戸隊でマスコット的なキャラとして登場しておきながら、今や団体トップの一角だ。

 

なんだかんだその実力は伊達じゃない。

 

そこに偽物?として登場し、試合前にはSNSでも積極的にアピールし、早々に強烈なインパクトと話題を残した。

 

そして試合当日、試合は何を見せるかである。

 

試合前の展開から入場まで全てにおいてお互いにキャラを貫いたので、試合はどうなることやらであった。

 

 

結果、試合は思ったよりもシビアな展開だった。

 

どれだけふざけてみても、女子のトップの団体でベルトを持っている中野たむは、やっぱり伊達じゃない。

 

試合序盤は戦前の通りにコミカルに行くか、という気配もあったが、さすがだなと思った。

 

私みたいなやつ含めて、批判も散々あったであろう中でそれでも自分を貫き通した女である。

 

何回もいうが、伊達じゃない。

 

石川も、せっかくつかんだチャンスだから爪痕を残してやるという気合いは序盤からも感じられた。

 

だけど、それよりもずっとたむの気迫が早々に上回っていた印象だった。

 

一番のポイントは、自作ベルトを巻いてきたことが鍵だったのかなという印象だ。

 

プライドがあるし、何よりそれを軽視することは団体そのものを軽視されることにもなるから、そこにしっかりと線を引いたのが彼女のチャンピオンとして矜持だったのだろう。

 

 

試合自体は実力の差もまざまざと見せつけたし、なんなら明らかに途中で石川は心が折れた瞬間があった。

 

それを見透かしたたむが、もっとついてこいよ、とばかりに少し間を置きながら攻撃を喰らわすような場面もあった。

 

そこで3カウントをくらってもいい瞬間もあったけど、石川はそこで肩を上げた。

 

体力的にも試合の引き出し的にもメンタル的にも折れているのは明らかだった。

 

だけど、それでも食らいつこうという意地を見せたところに、計らずもグッときてしまった。

 

ここからはどこまで意地を見せられるかだ。

 

おふざけだけで終われるほど、やっぱり中野たむは甘くない。

 

その覚悟がお前にあるのか?と問うように、中野たむというブランドのためにも見せつける様にも彼女の意地や矜持が見えたし、最後まで食らいついた石川もよかった。

 

実力差なんてあって当たり前だ。

 

実力者の先輩レスラーがほとんどいなくなって、その中で客を呼ぶため、存在感を示すために自分なりに頑張ってきた自負もあったろう。

 

元いた団体に牙を剥いて、生意気を言って飛び出したところ、せっかくつかんだビッグチャンスだ。

 

チャンスである反面、そこでしっかりと自分を示せなければ大きな足枷にもなりうる。

 

その中で、試合までしっかり貫き通しただけでも大したものだが、なんとか最後まで頑張ったのだから、十分だ。

 

存在感をしっかり示しただろう。

 

 

自身のプライドも示しつつ、その上で新しい環境に挑戦しようとしている若手を受け止めつつ厳しさも見せてファンに対してもしっかりと見せつけていくたむの態度もすごくよかったし、自分なりに最後まで意地を示そうとした石川もすごく良くて、不覚にもちょっと泣いてしまった。

 

いい試合だった。

 

コミカルに見るべきか真剣に見るべきか、観客もどう声援を送っていいやら戸惑ってしまい、終始静かだったし、たむが思ったよりもエグい展開に持っていったのでそこでテンションの差が生じてしまったけど、大会のブランド的にもよかったと思う。

 

試合後はたむが共闘?を呼びかけるような場面もあり、コズエンの新たな新人として参戦していくのかもしれない。

 

それもいいだろう。

 

 

歳のせいか知らないが、最近若い子が頑張っているのを見るとグッとくるし、苦しんでそれでも歯を食いしばって踏ん張ろうとする姿を見ると本当にたまらないのだけど、一方でそこに壁として立とうとするベテランにもグッとくるという有様である。

 

個人的にはこれまで見た中で、今日のたむが一番よかったし、ほとんど心が折れながらも食らいついた石川も十分によかった。

 

実力さは明らかだし、何よりもほんにがそれを感じただろう。

 

試合後も、最後っ屁みたいなマイクしかできなかったし、差し伸べられたたむの手を素直に握るしかなかったくらい追い詰められてもいたんだろう。

 

ここからだよ、本当の勝負は。

 

アイスリボンも、実力のある先輩は誰もいない中で頑張っていたし、そこでそれなりの評価も獲得した。

 

でもそれで満足できなかったからこそ飛び出したんだから、コミカルはいい意味でも残しつつ、自分なりに本物になっていって欲しいものだ。

 

 

若い子の方が本質的には真面目である。

 

それに一生懸命だし、対して成功できなかった私のような存在からすれば、こうやって自分の力で切り開こうとしている子を見ると、素直に応援したくなる。

 

まだまだこれからだ。

 

 

大会最後を締めたのは、現役高校生の新チャンピオン、吏南だが、ずっと嬉しそうだったのもよかったよね。

 

若い子が頑張っているのはいいよね、もうおっさんだから応援したい気持ち満々だ。

 

でも、おっさんはおっさんで負けたくないから頑張るけどね、なんて最近の自分の会社での立ち位置も含めて、なんだかグッときてしまう大会だった。

 

 

野心や実力があるのに、その時の環境でうまく力を発揮できていない若手には、こういうチャンスがもっとないとな。

 

老人ばかりが権力を発揮するような世界に未来はない。