
最近プロレスを観に行くのは年始くらいで、そのほかは何かよほど気になるものがあれば程度になっている。
流れはそれとなく追っているが、以前と比べればモチベーションは下がっている。
とはいえプロレス自体は好きなので、観に行けばそれなりに楽しんでいるわけである。
で、年始はなんとなくノアの元日大会はここ数年観ており、新日のドームはよほどでないと家でワールドで観ている。
ドームはデカすぎて試合そのものを楽しむと言うよりはお祭りだからね。
しかし、今年はやはり外せなかった。
なぜなら棚橋の引退試合だったから。
正直に言えばそこまで熱心なファンというわけではないし、かつての三銃士では私は柴田のファンで、当時は中邑も格闘技色強めのスタイルである中で、棚橋は藤浪譲りのドラゴン殺法を駆使していた。
私はそこまでオールドなファンではなかったし、元々格闘技の方が好きだったところからプロレスに流れてきて、よく観ていたのは三沢も在りし頃だったので、所謂四天王プロレスに当てられたこともあり、彼のスタイルは物足りないと感じていた。
私が見始めた頃にはすでに若手の1人として台頭し始めていた頃で、U-30のベルトを創設したり、吉江とIWGPタッグを持っていたり、永田と共にノアに乗り込んで力皇、森嶋のワイルド2とバチバチやっていた頃だった。
当時は総合格闘技がテレビ地上波で全盛で、PRIDEやK-1が年末の定番になっていた。
他方のプロレスは、一部レスラーが出場してKOされる様が流されており、まさに不遇を食らわされている真っ只中だったな。
新日レスラーで、永田、中西はじめ、安田、村上、石澤なども参戦。
後は中邑も総合に出て、K-1選手だったイグナショフに勝利していたな。
このようにある程度結果を残したレスラーもいたが、その中でも突出したのはやはりUインター系で、桜庭、高田あたりはプロレスの希望などと言われていたそうな。
ただ、当時総合に出ていたのは猪木がまだ権力を持っていた新日のみで、ノア、全日はノータッチ、強いて言えば杉浦が少しだけ参戦していた気もするが、それくらいだった。
ある意味プロレスとしての牙城をノアが守ったような格好だったので、ノアだけはガチ、などと言われていたな。
棚橋は新日系でありながら、格闘技色が一切ないレスラーである。
レスラーが総合の舞台で負ける中で、かつてプロレス最強と信じていた層が離脱、暗黒時代と呼ばれるようになるわけであるが、この頃から棚橋が明確にスタイルを変え始めた。
ドラゴン殺法を徐々に封印し、オリジナルフィニッシュを出し始めた記憶だ。
柴田がハードヒット、中邑がグランド主体の総合スタイルとなる中で、純プロレス的なスタイルを貫いていたわけだ。
対抗先にはノアの四天王プロレスもあっただろう。
その後まもなく三沢がリング上の事故で亡くなり、川田が気力の問題もあってか離脱、小橋はガンを患って一線から退き、田上が社長兼選手としてやっている期間もあったが、徐々に翳りが見え始めていた。
過激さは麻薬みたいなものだから、ひたすら危険な方向に加速しすぎていくことへの懸念とアンチテーゼとしての矜持もあっただろう。
彼なりのプロレス論もあったのだろうなと思っている。
その後、総合格闘技の人気も翳り始める。
一つはボコボコに腫れた血まみれの顔が、テレビのゴールデンタイムで放映する位は過激すぎるという話と、もう一つはコンプラ強化に伴う裏側の存在のためだ。
あっという間にその人気は引いていき、今では日本ではマイナースポーツになっている(RIZINはなんだかんだある程度集客があるらしいが)。
それと前後するように、徐々にプロレス人気は復調し始めていた。
新日本は猪木体制から、オーナーがゲーム会社のユークスになって、様々な権利関係が整理されて、体質的に猪木の団体ではなくなっていた。
その頃には中邑はたぎり始めていたし、柴田は総合格闘技へ転向してまたプロレスに戻り始めていた頃か。
棚橋はもちろんエースだ。
さらにオカダが台頭し、新たなエースが登場し、ブシロードがオーナーになった。
そこからプロモーション強化もされたことで新しい層にもリーチし始めて、今に至るわけだ。
新日本プロレスがこうして再び浮上してきた原動力というか礎は、間違いなく棚橋の功績である。
新体制になってからも、飯伏、ケニーが登場したことで再び過激路線に。
やはりファンは熱狂するわけであるが、この時は棚橋もかなり危機感を覚えたのではないだろうか。
また、KENTAとまさかのハードコア戦をやることになった際には、試合後に涙する場面もあったが、その際KENTAのSNSでのコメント含めて印象的であった。
そんなあれこれはあったが、結果的に今に至れば支持されたのは棚橋だったし、過激さやWWE的な割り切りがプロレスの生きる道ではない、ということは明確に示された。
それこそオカダもそうだし、デイビット・プリンスやAJ、ジェイやオスプレイ、バレットクラブの面々など、新日本で育ったレスラーがWWEでも活躍しており、他の日本人レスラー含めて定期的に引き抜きの話が出てくる。
そうした目に見えてわかりやすいレスラーだけでなく、新日本の選手は全体的に言ってずば抜けて選手層が厚く、ベースのレベルが高い。
これはヘビーもジュニアも両方で、フィジカルの強さは言わずもがな、ちゃんとプロレスセンスもあるし、成長も著しい。
定期的にちゃんとスターが出てくる土壌もある。
もちろん親会社のブシロードの資本力やキャラクタビジネスのノウハウをうまく使っていることはあるものの、それができるのもどの世代にもちゃんと見せられる試合をできるのが何よりだ。
他団体との絡みを見るたびに本当にそれを感じる。
そうしたプロレスの中からの発信もさることながら、タレントとしても外に出たり、裏側でいろんな人と健全に繋がったりということもやってきたことがちゃんと結実しているわけである。
これはすごいことで、まさにプロレスを変えたのだから。
前置きが長くなったが、そんな棚橋の引退試合は東京ドームが超満員、相手はオカダ・カズチカだ。
いろんな期待値はあったけど、結果的に良かったと思う。
詳細は書かないけど、棚橋は最後まで棚橋だった。
天龍の引退試合はプロレスラーとしての矜持を示したように思うけど、棚橋の引退試合はプロレスのあり方を示したような試合だったと思っている。
何の違いかと言えば、会場全体が棚橋を応援する、みたいな空間だったけど、そういう多くの人が一緒に熱狂する空間を作り上げる、という意味である。
それは棚橋が積み上げてきたものと、やっぱりオカダという圧倒的なレスラーがいて成り立つからね。
オカダもやっぱりすごい。
リング上ではかつての場面を、レフェリーの海野さん含めて再現するようなところが諸所にあり、またかつての盟友たちのムーブをやる場面も。
試合は30分を超える長丁場であったが、最後はしっかりをオカダが締めた。
いい試合でしたね。
試合後のセレモニーでは退団者が花束進呈に来場していたが、みんなちゃんと入場曲+花道からの登場がほとんどだった。
やはりAEWからが多かったが、柴田も登場。
また飯伏もケニーと共に登場したが、おそらく当日急遽できたのだろう。
入場の演出もなく、服装もTシャツ、怪我のため歩くのもおぼつかないくらいだが、自力で歩いていたな。
辞め方は良くなかったが、棚橋も飯伏を小突くような場面もあったし、会社としての立場と個人としての立場は違うからね。
また内藤も登場したが、とにかく入場が長いし、マイクもちょっと自分を出しすぎだろと正直思ったな。
まあ、一番びっくりしたのは武藤も棚橋も引退なのに、藤浪がまだ現役という事実だが。
正味5時間を超える長丁場だったが、体感的にはあっという間だったな。
他の試合ももちろんどれもクオリティは高いしね。
セミになったが辻とTakeshitaの試合も良かったよね。
Takeshitaはちょっとずば抜けすぎているのが難しいところだが、辻も序盤に肩か首を痛めたようだったので、それがなければもっとよかったかもな。
またウルフアロンのデビュー戦についても、すでに方々で言われているがEvilが光っていたな。
アロンももちろん良かったんだけど、とは言え明らかに序盤ですでに肩で息をしていたし、プロレス的な引き出しはまだまだなので、ラフな試合にあえてすることでヒーロー感を煽れるし、受けている間は受け身でいられるからね。
ラストの三角絞めについても入り方は流石に鮮やかだったが、他方でそこに持っていく流れをちゃんとEvilが作っているというね。
なんだかんだ影のエースはEvilかもしれないな。
こうした試合もさることながら、お客さんもしっかり盛り上がって楽しんでいる感じもよかったよね。
話題があれば一見さんでもドームクラスを満杯にすることはあるだろうけど、この試合での満杯はそれとはまた価値が違うよね。
かつて暗黒時代と呼ばれていた頃に歯を食いしばって、世間からも批判やブーイングを浴びて、時に自分があえて踏み台になりながら支えてきたことなどが積み重なってのこれだからね。
これからは社長としてやっていくだろうから、今度は裏方として時代を作って行ってほしいね。

















