船木は武藤への合流を示唆しているし、一方諏訪間は全日本残留を表明。
ノアからの離脱組も全日本を主戦場とする事を表明しており、喧嘩両成敗的な着地が見え始めている感がある。
今回の中心人物はやはり新オーナーとなった白石さんだろう。
この人のことは全く知らないが、所謂今時のイケイケ社長という感じのようだ。
昔からプロレスファンだったとのことだが、武藤全日本の方針にNOを突きつけ、曰く「ガチンコプロレス」を掲げている。
宝島社のムックなんかでガッツリインタビューが組まれているのでそちらをみると、とりあえずこの人のやりたい事は何となくわかる。
要はプロレスを格闘エンターテイメントではなく格闘にしたい訳である。
かつて90年代の終わり頃まではまだ残っていたプロレス幻想を現実に変えたいようだ。
理屈としては、精神性ありきだろ、ということらしい。
彼の主張というか、考えについては個人的には一定の理解は示せる。
プロレスはあくまでショーである。
八百長ではなくショーなのである。
そこで魅せるものはもちろん肉体の強さであり、技であり、闘いであるが、一方で別なものも魅せている。
不屈の精神みたいなものかもしれないし、あるいは負けない心、あるいは意地と言っても良いかもしれない。
単に相手を倒す事だけを魅せている訳ではないのはたしかである。
勝つにあたってはいかにして勝つかが重要だし、負けるにしてもどこまで受けきるかも重要だ。
勝った負けただけの世界などは別に総合に譲れば良いのである。
で、白石さんはプロレスの範疇でその勝った負けたに重点を置いた事をやりたいと考えている訳だ。
プロレスに置ける勝負論ではなく、格闘技的な意味での勝負論を持ち出している訳である。
その考え方に対しては、既存のプロレスファン、関係者には受け入れ難い部分が多い。
何故ならすでにプロレスラーの大半はそうした強さを示す事に失敗しているからである。
しかもプロレスの技はそういった勝ち負けにこだわるのであれば基本的には不向きである。
であれば、必然的に使う技は変わってくる。
仮にルールで既存のいわゆるプロレス技を使う事を義務的に定めるのであれば、それこそ歪な展開にしかならず、毎回判定、ドロー以外にはふれないような展開になるだろう。
個人的にもし彼の嗜好する方向に一番近いもので考えると、UWF的なものになるだろうと思うけど。
私の見解と言うか、解釈だとUWFの指向していた方向性としては、実践的なスキルを持った選手が高度な技の応酬で魅せる試合をする、という所であると思う。
あくまでプロレス的なベースの下であるが、そこに確かな勝てる技術を裏付けとするという点で似ているかもしれない。
決定的違うのは、あくまでプロレスという枠の中での魅せ方を変えるのか、あるいはプロレスというジャンル自体を変えるのかという点だろう。
白石さんは後者である。
だから反発も強い。
やってみなければわからない、という彼の主張はいかにもベンチャー系の社長らしい発言ではある。
しかし、一方でプロレスと言うジャンルならではの面白さは消えてしまう。
仮に彼が独自に団体を立ち上げて、有志を募ってやるのであれば誰も文句は言わないし、もっと好意的な評価もあったかもしれない。
しかし、今回は全日本プロレスと言う実態はともかくもメジャーと呼ばれる看板を背負ってそれをやろうとしている事が問題なのだろう。
全日本に求められるのはそういうものではない。
やってみなければわからないとかいう話とは別の次元の反発なのである。
恐らく彼はそこを理解していない気がする。
百歩譲って、10年前の新日本でなら幾許かの好意的な意見はあったかもしれない。
だけど、既存の団体でそれを受け入れられるところは、今の時点ではないだろう。
実際に新全日本のリングがどうなるかはまだわからないし、実現性についてもわからない。
だけど、やはり失敗におわるんじゃないかな、 と思うけど。
それは武藤新団体も同じだけどね。