続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

プロレスイデオロギーの闘争

新日本プロレスは相変わらず好調な動員を記録しているようで、まさに黄金時代が蘇りつつあるようだ。

本当に見事な手腕だったよね。

昨日の大会では1年以上タイトルを保持していたカズチカがついに陥落、外人ヒール軍団の新総帥として来日したAJスタイルズが新チャンピオンになった。

スタイルズと言えば、数年前にも来日して一時期巡業に帯同もしていて、当時は確かジュニアだった気がするが、いつの間にか風貌も何も変わっていてびっくりしたけど、TNAはサモア・ジョーとかも含めて着実に選手を育てているからすごいなと思った。

WWEとは違う、どちらかと言えば日本的な色のつよいプロレス団体なので、馴染みやすいんだろうね。

ともあれ、やや閉塞感のあったIWGPに新しい動きをもたらしてくれるだろう。

これでカズチカも少し身軽になるし、インターコンチやNeverなど他のタイトルも少しずつ色が出始めているので、その中でIWGPを団体の象徴としてどう機能させるかである。

ビッグマッチも数多く控えているので、それらのベルトを個々に際立てつつ、興行を組み立てないと行かんからね。


さて、そんなタイトル戦線とは別に話題になっているのは、やはりカムバック後活躍著しい柴田絡みである。

最近では棚橋とのかつて新三銃士と呼ばれたもの同士の対決である。

しかし、この対決の非常に面白いところは、プロレス観についてのイデオロギー的な闘争が見えるところである。

今の新日本のスタイルの最も基礎を作ったと言っても過言ではない棚橋のスタイルに対して、柴田は古風なスタイルはかつてのストロングスタイルと重なる部分があり、その無骨さが今の新日本で際立っている訳である。

試合の度に雑誌でも比較的大きく扱われるわけであるが、その写真においてはいずれも棚橋の顔は単なる憎々しさなんかとは違う感情を見せている。

棚橋自身は柴田に対して終始否定的なコメントを出しているし、今週の週プロでも複雑な表情でたたずむ棚橋の写真が小さいながらに印象的であった。


正直棚橋にとっては柴田の存在は面白くないはずである。

単に苦境の時代に退団をして、上り調子になってきたら戻ってきたという状況に対して、都合のいい事しやがって、みたいな感情だけではないのではないかと思う。

自身が築き上げた今の新日本の中にあって、かつてのスタイルの柴田がここまでファンに受け入れられてしまったという事実そのものが彼に取っては悔しくてしかたないのではないかと言う気がする。

コメントでも、ただ暴れるだけなのはプロレスじゃない!と柴田のスタイルに否定的な訳であるが、棚橋の言いたい事がわからないではない。

確かに、ただ殴る蹴るがプロレスではないし、柴田のスタイルは一歩間違うと単なる潰し合いになってしまう。

もちろん柴田自身はそんな試合はしていないし、プロレスというものを彼なりに体現している訳だが、そう易々とは受け入れられないよね。

そこにこそ棚橋のプライドもあるだろうし、一番苦しい時期を支えてきた自負もあるはずだ。

だからこその感情がにじみ出ているのが実に見てる側としては面白い訳である。


プロレスは単なる競技格闘技とは根本的に異なるところがある。

プロレスと呼ばれていても、アメリカとメキシコではまったく違うものとして発展しているし、日本のプロレスがプロ格闘技の原点であるのは間違いない。

どれが正解と言うものでもないし、どれが間違いという事もない。

ただ、詰まる所何を見せるかという点において、そのアウトプットが異なるだけなんだけど、その根っこで共鳴する者であれば形は違えどかみ合うし、それが違えば同じスタイルでも噛み合ないだろう。

棚橋と柴田はある意味ではその根っこの価値観が多分違うのだろう。

だから棚橋は認めることはできないし、2人が握手する事はないはずである。

でもだからこそ2人の対決は面白い。

個人的には棚橋のスタイルはすきじゃないけど、彼のプロレス観みたいなものは決して嫌いではない。

プロだと思うし。

今後これをどう展開させるかが、伏線としては重要なポイントになるだろうね。