続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

フィニッシュホールドのあり方

イメージ 1

 

プロレスに於けるフィニッシュホールドとはなんなのか、ひょっとしたら一部のファンにはその概念自体があまりピンとこないかもしれない。
 
一方で新日本のファンにとっては試合を楽しむための非常に重要な概念として理解されているかもしれない。
 
試合の中でプロレスラーたちは様々な技を使うわけだが、その中で試合を決するための文字通りの必殺技、それがフィニッシュホールドで、プロレスにおいてはそのフィニッシュホールドで完璧に試合を決するために様々な布石を打ちながら試合を組み立てていく。
 
そういう流れを一番徹底しているのはWWEだろう。
 
そして昨今それを徹底しているのが新日本である。
 
ファンがきちんと各選手の必殺技を知っていて、それが出そうな場面では期待感を持って盛り上がる。
 
終盤ではそれぞれのフィニッシュホールドをいかに決めるか、相手のそれをいかに避けるかという攻防も見ものになるわけだ。
 
それがプロレスに於けるわかりやすさの一つだろう。
 
 
今新日本ではG1の真っ最中で、間も無く予選試合が決着するタイミングになっている。
 
今年も決勝戦は両国大会なのだけど、おそらくソールドアウトだろう。
 
それだけの集客力をつけた新日本はまさに盤石だけど、それ以上に注目なのはノアの丸藤、中嶋の参戦である。
 
是非結果だけでなく試合の流れというのをみてほしいのである。
 
特にノアファン。
 
 
このG1での、特に丸藤の試合の仕方や流れの組み方がノアでのそれとは異なるのである。
 
そして、試合では不知火をそのフィニッシュホールドとして使っている。
 
ジュニア時代から彼の代名詞的な技で、コーナーポストを活用したリバースDDTな訳であるが、高らかに体を翻して繰り出すその技は非常に華があって見栄えもするしかっこいい。
 
そこに丸藤のセンスを見るわけだけど、近年ではこの技で決まることはあまりなかったように記憶してる。
 
その中で新しい技として虎王、ポールシフト、タイガーフロージョンなどを編み出しており、これらが決まり手となることが多かった。
 
それがこのG1では不知火をそのポジションにしているのは、やはり技のかけやすさという意味での汎用性と、くるりと大きく回転する見栄えの良さを押してのことだろう。
 
この技であれば持ち上げる必要もないので、どんな大きな選手にもかけられるしね。
 
虎王はむしろつなぎ的な技になっており、トラースキック、逆水平と合わせて試合のアクセントになっている。
 
 
で、話を戻すと、ノアにおいてはそこまで徹底した技の攻防というのはないし、むしろ技を受けることがノアの一つの美学だったが、逆に技の乱発につながってメリハリのない展開になってしまっている。
 
そこへさして、今の新日本のスタイルの中で試合をすると、当然彼らもどうつなげるかを考えるし、技の使い方も変わってくる。
 
その中にあっても丸藤は所詮のオカダ戦から見事にそういう戦い方をしている。
 
一方の中嶋は、おそらく彼自身必殺の垂直落下式ブレンバスター、バーティカルスパイクを今まで以上に意識的に使っているのではないだろうか。
 
技に入る前のアクションがやや大仰なのは気になるが、試合の組み立て方としてはいろいろ勉強になっている筈である。
 
これをノアに持ち帰った時に、何が変わるかである。
 
別にノアも新日本のスタイルに合わせるべきだ、という話では決してない。
 
ただ、プロレスでは試合の流れが非常に重要になるから、技を大事に使う、どの技をどう使うのか、ということを考えながらやることは非常に重要である。
 
それによって試合にメリハリが出るし、序盤から技を出しまくるハイスパートな試合も映えてくるというものだ。
 
 
少し話は変わるけど、以前週プロのコラムでイオが、女子プロレスに於ける同じ技を繰り返しまくるムーブについて話ていたものがあったのだけど、そこで彼女の技への意識というものがよく表れていたし、女子プロレスが形骸化していく一つの要因も定時されていて面白かった。
 
結局大きな技は客の反応も早いし、それ自体がわかりやすいので盛り上がる分新人レスラーほど安易にそちらに走っていくし、特に最近の女子、インディ男子はそうしたアクロバティックさばかりに目が向けられるから試合そのものはつまらなくなるのである。
 
勝てばいい、というだけの価値観ではないプロレスならではの面白みがそういうところにも出てくるのである。
 
出口から逆算して組み立てる。
 
これは馬鹿ではできない。
 
仕事のできる人は逆算して段取りを組める人である。
 
プロレスも、自らの思い描く終わり方をきちんと描くことで、そのためにどう攻めていくべきかが見えてくる。
 
 
新日本のレスラーはみんなそうやって試合をしているだろうし、だからこそレベルも上がって、客もわかりやすく集客にも繋がっている。
 
もちろんそれが過ぎると今度はジュニアタッグみたいにサーカスみたいになってしまって、それはそれで違うだろうという話になってしまうから、そこをどうさじ加減をするかである。
 
WWEになった瞬間新日本の価値はなくなる。
 
だからそこまではいってはいけないし、かといってだらだとしたむやみにしんどさだけを見せる試合では誰もついてこないし、つまらない。
 
重視すべきところは残しつつ、どこにらしさを持っていくかがポイントだよね。
 
そして、他団体のリングで試合をすることでそういう側面も浮き彫りになってくるから、交流戦というのは面白いよね。
 
 
丸藤には、引き続き頑張ってほしいな。