続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

Life Story ー語るべき物語

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今日はプロレスで2つの胸熱なトピックがあった。

新日本プロレスとスターダムだ。

 

キーワードはずばり”Life Story”だ。

 

私にとってプロレスの中で面白いプロレスってなんだ?と聞かれたら、この言葉に集約されると言って過言ではない。

 

 

まずは新日本でのLife Story、その主役はKENTAだ。

 

私がプロレスを見るようになったのは、今から15年くらい前だ。

 

総合格闘技が全盛だった頃なんだけど、そんな時からずっと好きなレスラーが二人いる。

 

柴田とKENTAだ。

 

KENTAは当時はNoahで丸藤と二人でジュニアのスーパーエースだった。

 

それはプロレス界全体でのことで、ノアだけはガチという信仰まで生まれていた頃だ。

 

そんなKENTAも、WWEへの挑戦は思うような結果は得られず、非常にネガティンブな中で日本に帰国して、どのリングに上がるのかと注目される中で選んだのは新日本プロレスだった。

 

盟友柴田に招かれる形だったが、当時フィットできていたかと言えばそうではなかったのは誰の目にも明らかだった。

 

しかし、そこから時間も経って今に到れば、すっかり存在感を示している。

 

とはいえ、本当の意味でのトップかと言えばそうではないというのが正直なところだ。

 

SNSでの舌戦も込みで評価されている現状は、全盛期の彼を知るものとしてはちょっと歯痒さもあるのは正直なところだ。

 

だけど、それでも意地はある。

 

今日はNoahの時からの旧知であるザックだ。

 

当時は小川良成とのタッグで、飛んだり跳ねたりのアクロバティックなジュニアの試合に一石を投じていた頃だが、線も細くまだまだ新人だった彼と比べれば。KENTAは3つ以上ステージが違った。

 

そんな二人が、対等な立場どころか、なんなら試合結果やポジション的には完全に逆転した中での試合が今日だ。

 

それぞれの意地だったり、解説はデスペと金丸なのもいい。

 

結果はKENTAの勝ちだったけど、なんかこの試合はずっとたまらないものがあった。

 

肉体的には全盛期ではないし、怪我も多い。

 

それでも戦うKENTAの姿っていうのは、昔から見ている私のような存在にはちょっとたまらないのだ。

 

年齢的にも明らかなところはあるし、かつての圧倒的な後輩が成長する様は嬉しい反面、そこにあっさりやられてしまうことの切なさ、わかるか?

 

結果的には勝利を納めるわけだけど、まだまだ死なないぜって、終わらないぜっていうのがもうぐっときて仕方ない。

 

プロレスは八百長だショーだといまだに本質でないことを言う奴はいるけど、本当に毎日一緒懸命、クソみたいな現実の中でやっている人なら、そんなことは言えないというのは彼の試合を見ればわかるはずだ。

 

だからKENTAは好きなんだ。

 

必死だもん、かっこいいよ。

 

今一番プロレスを体現している存在の一人がKENTAだと思っている。

 

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もう一つのLife Storyは、スターダムの葉月vsコグマだ。

 

昔からのファンなら知っていることだが、二人とも一度引退して復帰した選手だ。

 

コグマはあのイオからベルトを奪取し、その動きから何からセンスの塊、天才と言われた存在ながら、ある日忽然と姿を消してそのまま引退となった。

 

女子には割とありがちかもしれないが、おそらく家庭の事情とかだろう。

 

片やの葉月は、デビュー当時は田舎のヤンキー娘、よしこ2世みたいな感じだったが、ターニングポイントは大江戸隊での花月との合流だろう。

 

肉体改造も取り組み、派手さはないが渋い技術を身につけて色気のあるレスラーに化けていた。

 

しかし、当時ブシロード体制への移行や、実はその手前からの色々の感情的な柵の中で団体批判をしながら引退すると言う、ファンとしては非常にモヤモヤした幕引きとなった選手だ。

 

 

そんな二人だが先だって復帰したのはコグマだった。

 

両国大会でのエキシビジョン参戦をきっかけに本格復帰、体格こそだいぶふっくらしたが、それでも期待値はやっぱり高かった。

 

岩谷と合流してしばらくは体慣らしといった感じだったが、SNSでのやりとり含めてそのセンスは健在だった。

 

そして葉月、木村花の1周忌大会での限定参戦だったはずが、その後本格復帰を宣言、今日がまさにその日となった。

 

前段でマイクだけで登場したが、その際にはマイクの内容含めて正直空ぶっていた感は否めなかったが、その後大きな会場である大阪城ホールでの復帰戦が発表され、その相手はコグマであった。

 

この二人は実は同期で、デビュー当時はキャラもユニットも全く違ったし、コグマはずっと天才、エース街道を進む一方で、葉月は先にも書いたとおり1新人でしかなかった。

 

当時16とかそれくらいだった若い二人が、大人になって改めて邂逅したというシチュエーション自体に既にグッとくるのだけど、考えてみれば当たり前とも言える個人的な感情をお互いに持っていた。

 

そこに刺して測らずも二人が同じ時期での復帰だ。

 

葉月の復帰戦はコグマが相手をする形での今日である。

 

 

そんな復帰戦、結果は葉月の勝利だったが、胸熱なのはその試合後だ。

 

葉月がタッグリーグでの共闘を呼びかけると、コグマが素直な心情を吐露する場面が。

 

行って仕舞えば、二人の歴史ありきの言葉なんだけど、これがプロレスだよなと。

 

解説席の長与の涙も誘ったそのマイクは、プロレスというジャンルの面白さだったり魅力を十二分に詰め込んだものであった。

 

これからの二人に乞うご期待だ。

 

 

先にも書いたけど、プロレスの面白さの大きな要素の一つはLife Storyだ。

 

この言葉自体は、ヒップホップの現役レジェンド、Tha Blue Herbのアルバムタイトルで、別になんて事のない言葉でもある。

 

だけど、最近私にはやけに印象的な言葉として、とても刺さって仕方ないものになっている。

 

その手前で、ずっと心の中にあった言葉が「人には誰にでも語るべき物語がある」というGarbageというバンドのヴォーカルの人の言葉だ。

 

人生には浮き沈みがあるし、多くの人にとっては面白くないことの方が多いはずだ。

 

大なり小なり苦労はしているし、芯からむかつくことも少なくない。

 

それでも生きていかないといけないのが人生だし、それぞれがそれぞれの人生の中で生きている。

 

いいこともやなこともある。

 

でも、生き残るために必死だし、そんなにカッコ良く生きてなんていけない。

 

一度引退した選手が復帰することに批判的な意見は少なくはないし、その気持ちはわかるけど、でも人生なんていやでも続いていくし、色々繰り返しながら死ぬまで続くものだ。

 

カッコ悪くても、批判されても、それでも生きていかないといけない。

 

それを何より表しているのがプロレスだと思っているし、だからこそ今日の試合はどれもグッときた。

 

 

人にはそれぞれ語るべき物語がある。

 

私は私自身の物語を語れないのが正直なところだけど、それでも生きていかないといけない。

 

私にとっては、向こう3年くらいが本当の意味で勝負になる。

 

そこでうまくいかなければ、もう生きていても仕方ないので本当に死に方を考えようと思っているくらいだ。

 

 

ともあれ、人生なんてカッコ悪いのがデフォルトだ。

 

最後は自分がどうしたいか、それだけだ。

 

本物が示す心意気は、ジャンルとかそんなことは問題じゃない。

 

必死なんだよ。