続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

帝王 -高山善廣

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先の試合で怪我をして欠場していた高山について、今日悲しいニュースが流れた。
 
生きてはいるが、体は動かず、自立呼吸はできているし喋ることもできるみたいだが、首から下は動かないらしいのだ。
 
一時は呼吸ができずに人工呼吸器をつけていたり、心肺停止にまでなったというから、それでも回復したと言えるだろう。
 
だけど、それでもあの体の大きな高山が、今は病院のベッドで天井を見つめる日々というのは長らくプロレスを見てきた身からするとやっぱり悲しい。
 
今日記者会見があったようで、高山の容体を伝えるとともに、リング上で共闘もしていた鈴木みのるが高山の支援団体立ち上げの有志代表として参席したのだけど、その状態を語るときは涙ながらというから、それもよりグッとさせたものがあった。
 
 
私がプロレスを見始めたのは2002年とかそれくらいの時期で、プロレスが格闘技の人気に押されていた頃で、最近新日本プロレスの人気の影響でしばしば流される衰退期。
 
その頃は高山が”マット界の帝王”の異名の元、IWGPとNWAの2冠王者であった。
 
身長2m近くの巨体であの風貌である。
 
トップロープをまたいで入場する姿はまさにその異名にふさわしく、実にプロレスラー然としていた。
 
ただ、今思い返しても高山は絶対王者ではなかったし、むしろ最後は美味しいところを持って行かれてしまうヒールチャンピオンだったと思う。
 
それこそIWGPは、当時新日本の期待を背負う若手の1人で、格闘技戦にも望んでいた中邑によって奪われたのだが、それにより中邑は当時最年少チャンピオンになった。
 
今も恒例の1.4ドーム大会での試合だったけど、その数日前の年末格闘技戦に中邑は出ていて、そこで確かアレクセイ・イグナショフと試合をして勝ったのだけど、顔は腫れ上がっていた。
 
そこへさして、高山のニーリフトの迫力はすごかったよね。
 
最後は関節で中邑が勝ったのだけど、高山でなければまた全然違った試合だっただろう。
 
 
ちなみに、個人的には高山のプロレスはあまり好きではなかった。
 
お世辞にもプロレスがうまいとは思わなかったし、鋭さみたいなものは感じたことがなかったから。
 
だけど、どんと構えて放つビッグブーツやニーリフト、そして全盛期のエベレストジャーマンはやっぱり見栄えがしたしね。
 
最近は筋力も落ちて、明らかに動きは緩慢だったり、ジャーマンもしっかりブリッジできなかったりと衰えは隠せなかった。
 
それでもDDTでファイトルスタイルやキャラを変えてもしっかり存在感を残すあたりは、やっぱり彼がプロレスラーということを示しているといえるだろう。
 
鈴木みのるとウマがあったのも、そうしたプロフェッショナルさからだろう。
 
 
それに、高山はなんだかんだ様々なリングに呼ばれたり、バラエティにも出ていたんだけど、一重のその男気というか、そういうところが多くの人に慕われていた理由じゃないかと思っている。
 
知らなかったんだけど、鈴木みのるがプロレスに復帰する決意をしたそのきっかけには高山のプライドでの一戦があったという。
 
格闘技ファンでは知らない人はいないであろう、ドン・フライとの一戦である。
 
ほぼ一方的に殴られていた試合だけど、一歩も引かずに真正面から受けて相手の顔面を殴り変えしたあの試合は、今だに日本の格闘技史に残る名勝負と言える。
 
あの試合でも、彼は完全にプロレスラーだった。
 
それに、小橋が腎臓がんから復帰したとき、健介が怪我から復帰したとき、彼はいち早く駆けつけてリングを彩った。
 
大量離脱で窮地に立ったノアに会えて残って戦っていたこともそうだし、そうした男気は彼の魅力だった。
 
 
そんな彼が、試合中の受け身の失敗だと思うけど、頚椎完全損傷という状態、医者からは回復の見込みがないと言われてしまっているらしい。
 
プロレスファンとして、悲しいニュースだったけど、だけどどこかで高山ならなんか頑張って復帰してくるんじゃないか、何年も後のことかもしれないけど、自分の足で歩いてリングに上がる姿を見せてくれるんじゃないか、なんてことを期待してしまう。
 
だってまだ死んでないし、コメントだけはいつもの力強い言葉を残してくれている。
 
別に綺麗事が言いたいわけでも絵空事を信じているわけではないけど、プロレスラーっていうのはそう言う存在なのである。
 
柴田が入院した時、オカダがマイクで話した「プロレスラーは超人なんです」という言葉は、実はプロレスファンが信じているとても大きな価値観だと思う。
 
別に普段そんなことを口にしないし、そんなことをいうレスラーがいれば平生であれば、またまたぁとか思うんだけど、こういう事態になるとそれを信じている自分に気がつく。
 
 
試合はできなくていいから、車椅子でもいいから、リングサイドでの実況でいいから、その姿を見せて欲しいと本当に思う。
 
スーパースターとは言えないレスラーだけど、誰もが知っている彼は、やっぱり帝王という言葉が一番しっくりくる気がする。
 
頑張って欲しいと、それだけしか言えないけど。