続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

LAST LOVE 武藤敬司引退 

遅ればせながら、武藤敬司引退試合を観に東京ドームへ行ってきた。

 

個人的な思い出としては、私は全日本の社長だった頃からの武藤しかしらない。

 

プロレスを観始めたのがちょうど其の時代だったんですね。

 

それこそ小島もいて、真田や征矢、カズ・ハヤシとか、諏訪魔が諏訪間だった時でしたね。

 

武藤と同じく引退となったNOSAWA論外も、なぜ論外になったのか、というところもよく覚えている。

 

私が初めて生で観た有名レスラーは、当時ZERO ONEだった橋本だった。

 

もう20年近く前になるけど、当時はまだ地方の体育館でも興行があって、選手入場の花道近くに駆け寄っては写真とったりハイタッチしたりできたんだよね。

 

そんな中で近くで観て驚いたレスらーの1人が武藤だった。

 

とにかくでかいなと思ったのだ。

 

身長もそもそも高いし、厚みもあって、これがプロレスラーかと思ったものだ。

 

三沢や小橋、もちろん橋本にも同じように感じたんだけど、こうして名前を列挙してみても、みんなもう現役ではないんだよな。

 

闘魂三銃士、四天王の最後の1人となった武藤もついに引退である。

 

というか、あのコンディションでよくやってたよなと思うよね。

 

年始の中邑vsムタも観に行ったけど、当たり前だが全盛期には及ばず、それでも存在自体がスターだからな。

 

最後の勇姿はやはり観ておきたい。

 

 

しかし、仕事の都合で開始時間には間に合わなかったので、せめて全日vsノアのタッグ戦、中嶋と宮原からは観たいと思って、幸い外出だったので帰りがけでそのままぶっちぎって会場へ駆けつけたら、まさに其の試合のゴングであった。

 

席はドームの割には割と近い席だったけど、リングまでは少し距離がある。

 

タッグマッチだったので、目の悪い私には少し観づらいところはあったけど、注目の中嶋・宮原のぶつかり合いはやはり目で追ってしまう。

 

かつて同じ健介オフィスでデビューして、その後袂を分つ感じになって、片や全日本のトップ選手、片やノアのトップ選手と、それぞれちゃんと立ち位置を持っている。

 

どっちもキャラ含めて全然違うしね。

 

フルフルでやり合ったわけでもなかったが、最後は拳王が青柳を仕留めて終わった。

 

相手はタッグチャンピオンなので、ぜひ次回は全日本に乗り込んでほしいものだ。

 

終了後、宮原は解説席にいた北宮にも絡んでいき、バックステージでも言及していた。

 

こういうアピール力っていうのは、本当にノアに足りないよね。

 

 

次は論外の引退試合、東京愚連隊として長らく共にいたMAZADAとのタッグで、相手は石森・外道だ。

 

外道はずっとインディ畑で一緒にやってきた仲間の1人だし、詳しく知らなかったが石森も論外とは浅からぬ間柄であるらしい。

 

しかし、試合は唐突に終わりをつげる。

 

突然リング上でひざまづいた論外が、何事か話しかけると、石森が急に涙ぐむような表情に。

 

そして必殺の体制に入る。

 

私はそこからクルリと丸め込むアクションかと思ったら、そのままブラッディ・クロスをくらい3カウントとなった。

 

場内が呆気に取られるとはまさにこのことで、えーーー!という驚きで溢れたんだけど、そのまま石森はかぶさるようにないており、大の字になる論外を観ながら外道がコールを煽る。

 

其の表情は寂しげだがどこか悔しいような感じもあって、こういうところにプロレスの人生を感じさせるよな。

 

外道に介抱されながら石森もリングをあとに。

 

しばらくして論外も立ち上がって、観客に頭を下げると退場していったのだけど、足取りは重く、片足を引き摺るようにしている。

 

テーピングをしているわけでもないので傍目には分かりにくいのだけど、コンディションは相当悪かったようだ。

 

それでも、自分の足でリングを降りて、これだけ大きな会場で引退を迎えられたのはいいプロレス人生の幕引きだろう。

 

 

そしてここからはシングル3連戦、ノアvs新日本の、ジュニア、ヘビー共にタイトルホルダー同志の戦いがあり、最後は武藤vs内藤だ。

 

まずはジュニアヘビーのチャンピオン対決、ヒロムと先頃キャラ変したAMAKUSAだ。

 

個人的にはあまり日本人にはWWE的なことって似合わないと思っているので、喋り方もなぜか時代劇風というか、無理しなくていいのにとか思ってしまう。

 

試合そのものはよかったんだけど、気になったのが同じジュニアなのにヒロムの方が明らかに厚みがあり、正直試合についても圧倒している印象だった。

 

試合前から、なんなら前の対抗戦の時からずっと海外遠征時代のマスクを持って煽ってきたわけで、それを試合中にも出して、途中でぽぉーんと放り投げると、しばらくしてそれをアマクサが拾う場面も。

 

まさか被るか?と思うも流石にそれはないが、それを無造作に捨てるのではなくリングの遠くまで思い切って投げ捨てた方が見栄えも良くてわかりやすかったのに。

 

最後はタイムボムで3カウントとなった。

 

試合後には握手をする場面もあったが、これを機にタッグを組むのも面白いかもしれないね。

 

かつてのタッグだった頃の2人は知らないが、そうして紡いでいくのがプロレスである。

 

 

そしてセミファイナル。

 

現役のチャンピオン同士のノンタイトル戦だが、満を持してというところと、やっぱりまだ早いんじゃないかという部分とちょっと複雑である。

 

試合前にはボイコット宣言もしたが、オカダ自らノアの大阪大会に乗り込んで奇襲を掛けるなど、話題をしっかり作っていく。

 

片や清宮はTwitterで挑発みたいなツイートを繰り返しているが、それじゃない感がすごかった。

 

そういうところだよ、清宮だけじゃなくてノアのダメなところは。

 

試合自体は、はっきり言ってオカダが負ける要素が見当たらないので、あとは清宮がどこまで食い下がれるかだけである。

 

なんとなくかつてのオカダのようなコスチュームに見えてしまうが、それはともかく入場時の会場の空気から既にオカダが勝っていたな。

 

そして、並ぶ姿を改めて見ると体格差もなかなかだ。

 

オカダは上背もあるがそんなに厚みのあるように見えないが、こうして並ぶとやはりそんなことはない。

 

むしろ清宮の細さがら際立ってしまう。

 

とはいえ動きは悪くないし、場外でオカダを投げて見せたりと、彼なりに気迫を感じるのは良いことだ。

 

なんとなくお坊ちゃんぽいというか、そんな印象がどうしても拭えないのは、以前なら三沢、今は武藤と、先達の技を借りてはそれっぽくやっているだけのように見えてしまうからだ。

 

技を受け継ぐとかオマージュするとか、それ自体はいいと思うけど、かと言って正式な後継者とかそういうのもなんか寒い。

 

まして永遠に彼には武藤殺法、三沢殺法と呼ばれるだけで、清宮殺法にはならない。

 

ちなみに、棚橋も昔はドラゴン殺法をやっていたが、いつしか自分なりのスタイルを身につけて今に至る。

 

プロレスファンはレスラーの生き様を試合を通して観ているので、誰かの真似をしているだけの人は魅力的でないのよね。

 

いい場面がなかったわけではないが、終始オカダの圧勝であった。

 

試合が終わるとリングで大の字の清宮を残して早々に引き上げていった。

 

まさかここまで新日本の勝ち越しという結末、しかし試合内容的にも納得せざるを得ないものであったね。

 

 

そしてラストはいよいよ武藤の引退試合だ。

ラストの入場シーンだ。

 

先に入場した内藤も、ガウンを脱ぐことなく待っている。

 

ともすれば脱いで待ってしまいそうだが、最後にあいたいするのだからちゃんと着飾っていないといけない。

 

それぞれコールが終わると、脱ぐのが長い内藤、目立ちたがりの武藤を待たせやがる。

 

直前に武藤は肉離れを起こしており、まともに試合ができるのかが危ぶまれる。

 

もはや会場全体の思いとしては、あのいつものお得意ムーブをかまして無事リングを降りてくれることを願うばかりだ。

 

たっぷりと間を取りながらお互いに詰め寄りつつ、いつもの動きも見せてくる。

 

武藤の代名詞である足4の字を内藤が決める場面もあり、観ているこちらがハラハラしてしまう。

苦悶に満ちる武藤だ。

 

試合中、STFにエメラルドフロージョンと、蝶野、三沢の得意技を繰り出し、終盤には袈裟斬りチョップも。

 

こういうのってあんまり武藤っぽくないなと思いつつ、試合前の煽り映像でも志半ばで命を落としたり、体がきかずにリングに上がれなくなってしまったりした同世代の想いを、どちらかといえばファンの側の想いを成仏させるためではあにかという感じだ。

 

なんどかムーンサルトをやろうとするシーンはあったが、果たされることはなかった。

 

最後にもう1回だけ観たいという思いと、でもやっぱり歩けなくなるような姿は観たくない。

 

そんな複雑さがずっと渦巻いていた。

 

最後は内藤のデスティーノで3カウントになったが、なんと25分を超える長丁場。

 

ラストへどう持っていくかを2人とも考えながらやっていたのはものすごく伝わってきたね。

 

武藤もそれほど動けるわけでもないので、よく展開させたね。

 

私は内藤ってあんまり好きではないんだけど、この試合はすごくよかったね。

 

終わった後は、ロスインゴの拳を合わせるポーズ。

何か喋るかどうかという感じはあったが、何も言わずリングを降りる。

 

うっすらと目に涙を浮かべているようにも見えたし、リングから降りてからも名残惜しいような空気をかく知れないあたりが内藤である。

 

彼が最初に好きになったレスラーが武藤というし、彼はなんだかんだ今でもプロレスファンのままなのが微笑ましいところである。

 

 

試合が終わると、マイクを持った武藤が唐突に、どうしてもやりたいことがあると言って呼び込んだのは蝶野だ。

 

解説席に座っていたところ、急に声をかけられてきょとんとする姿はサプライズ感満載だ。

杖をついて歩いていたので、足か腰も相当悪いのだろう。

 

それでもリングに上がると、ジャケットを脱いで武藤とロックアップだ。

 

こんな蝶野を観たのは何年ぶりであろう。

 

レフェリーは同じく招待席にいたタイガー服部だ。

 

武藤のデビュー戦は蝶野だったというから、最初の扉を開けた2人で最後のドアを閉める。

 

いいじゃないですか。

 

ケンカキックにSTFと得意技を出して、3カウントだ。

 

こうして一つの時代が幕をおろしたわけだ。

ここで古舘さんの口上を挟んで武藤退場。

 

今は10カウントとか流行らないんですね。

 

こうして武藤の引退試合は無事幕となった。

 

やはりプロレスラーはこうして無事にリングを降りてこそだ。

 

膝に不安の多かった武藤だがこうして自分の足で歩いて退場できたので何よりである。

 

この引退試合の相手は内藤でよかったよね。

 

 

大会としては大成功と言っていいだろう。

 

ただ、それはあくまで武藤の引退試合であって、ノアとしては課題ばかりだろうな。

 

ともあれ、良い大会であった。

 

引き続き長州とのタッグでテレビで頑張ってほしいところだ。