格闘技ブームも今は昔、一部の好事家のみが楽しむ形になってしまった格闘技。
結局日本にはあまり根づかなかった。
真剣勝負をやたらと叫ぶ輩が多いが、結局のところブームでしか物事をとらえられないのだろう。
日本人は本質的にミーハーな民族なんだと思う。
そんな巷の人たちにはおよそ興味のないことであろうが、先週土曜日は格闘技界にとっては一つの大きな出来事があった。
個人的にはそれくらいのレベルで語ってもいいくらいのことだと思っている。
日本では格闘技自体の人気が先に述べたような状況であるわけだが、その中で女子格闘技はさらにマイナー。
競技人口を見ても男子のそれとは比べ物にならないくらいだろう。
最近やっと日本でも有力な選手がそろってきたものの、イベントとしては残念ながらマイナーだし、恐らくメジャーにはなりえない。
そんな状況でも、海外に活路を求めつつ、国内の活性化にも力を入れてきたのがフジメグだが、今年39歳と言うこともあり、いよいよ引退となったわけである。
私が彼女を初めて知ったのは大学生の頃、その頃はケーブルテレビとかで女子格闘技の試合「スマックガール」とかがやってたんだよね。
そこで”秒殺女王”という異名とともに、それにたがわぬ圧倒的な強さを見せつけていたのが強烈に印象に残った。
全体的にレベルがあまり高くないのは目に見えて明らかな試合が繰り返される中で、一人だけオーラもなにも違ったものな。
男子に負けず劣らずのグッドシェイプな体もさることならが、女だてらに侍を感じさせるような存在であった。
彼女らとの試合も期待されたが、かなわなかったのは残念だったな。
それでも海外の格闘家からも男子の格闘家からも一目置かれる存在であったのは、ひとえに彼女のストイックさだろう。
かの青い目のケンシロウことジョシュ・バーネットも彼女に対してリスペクトを表明している。
もしあと5年早く女子の総合が日本でも育っていれば、もう少しいろんな展開が見えたかもしれないと思うと、やはり残念だ。
私は実はこの選手のことはよく知らなかったが、そういえばこの間のアメリカ大会で黒星を付けたのはこの人だった気がする、などと思いつつ。
しかし、現実はあまりに苛酷であった。
結論からいえば、不完全燃焼と言わざるを得ない。
相手選手の構え方のせいもあるのだが、2度のサミングによりドクターストップという結末。
ボクシングトレーニングを積んできた、というところで、構えている時には手を開いた状態にしており、ヒットの瞬間にぐっと握りこむスタイルだったため、体が交錯するときに入ってしまったのだろう。
別に故意でもなんでもないし、結果そうなってしまったというだけだから仕方ないけどね。
1ラウンドでそのアクシデントが起こってしまったため、長いインターバルが取られたが、3ラウンドを戦う前にドクターストップ。
フジメグ自身が悔しいだろうし、相手選手も待っている間前に手を組んでじっと状況を見守る様は、却って痛々しかったな。
試合後、フジメグからも声を掛けていたので、相手も泣きながら、最後のインタビューもずっと謝ってばかりでかわいそうだったね。
だけど、これが格闘技だし、もう1回で仕切り直しもしないのも、ある意味彼女らしい。
無念がない訳はない。
だけど、そこにいい訳しないのが素晴らしいわけで。
良くも悪くもプロレスにおける引退試合はハッピーに締めくくることができる。
小橋の引退試合ではばっちり華を持たせてもらっていたし、ゆずポンにしても結果は負けてもスターダムという団体の未来にもつながり、ゆずポン自体も完全燃焼と思わせてくれるものだった。
どっちがいい悪いの話しではないが、そこが厳しさでもあるからね。
とはいえ、最後に生で彼女の試合が見れたのはよかったよ。
今後どういう方向に行くかはわからないけど、彼女の功績が消えるわけではないしね。
世界一の引退試合がこんな小さな、マイナーな扱いを受けてしまうことはなんだか悲しいが、今後何かの形で実を結ぶ時が来るといいなと思うね。
本当にかっこいい選手でしたね。