続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

感情の闘争とプロレスの在り方

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Yahooニュースでも話題になっているが、昨日のスターダム後楽園大会ではある事件が起きた。
 
メインのタイトル戦で、挑戦者・安川をチャンピオン・世Ⅳ虎が一方的に殴りつけて病院送りにしたということだ。
 
プロレスの試合で喧嘩マッチと称して選手間の個人的な感情をぶつけ合う、ということ自体は昔からあることだし、まして選手がけがで病院送りになることも別に珍しいことではない。
 
リング上で命を失ったレスラーもいるのだから、プロレスは競技の性質上そういったこととは切っても切れない。
 
それに、個々人の感情のぶつかり合いみたいなものが面白さにつながる側面もあるため、それ自体が否定されるようなものではない。
 
しかし、今回問題になったのは、要するにプロレスではなく単なる殴り合い、というより一方的だったようだからただつぶしただけの展開になってしまったことだろう。
 
関係者の対応やコメントを観ても、これは明らかに世Ⅳ虎の暴走と受け取られてしかるべきであろう。
 
既にネットでは殴られて変形した安川の顔写真が出回っており、その様を見れば異様さには気が付くだろう。
 
幸いというべきか、先ごろ彼女のブログも代筆ということだが更新され、ファンに向けてメッセージが放たれたが、少なくとも文面からは精神的なところは大丈夫そうにも思える。
 
しかし、今もって怪我の詳細は発表されていない。
 
スターダム側は今日はその件でミーティングが持たれるとのことで、今日の夜には世Ⅳ虎の処分も含めて何かしらの発表がなされるであろう。
 
 
それにしても、これには団体側もファンも、そして所属の選手たちも一様に困惑したに違いない。
 
実際各選手がTwitterなどで断片的にコメントを発したり、率直なところをブログで書いたりもしているが、いずれにせよ伸び盛りの団体の中で、一つのひずみが表面化したような結果になったのだろう。
 
こういった問題は、形は違えどどこの会社にも起こりうることではあるが、今回は試合上の、しかもタイトルマッチで起こってしまったことで問題が更に注目されることになった。
 
詳細についてはわからないが、明らかに世Ⅳ虎が感情的な高ぶりを抑えきれなかった結果によるため、世Ⅳ虎の問題であると共に、まだ未熟な選手のそういったケアを行った会社としての管理責任も当然ある。
 
まだ事実関係などはこれから明るみになるであろうことなので、それはそれとして思うところを少し書こうかな、なんてね。
 
 
まず、当事者たる世Ⅳ虎についてだが、ここ数年では活躍が一番目覚ましい選手だし、業界内では将来も有望視される選手だから、団体としては若いながらにチャンピオンに据えている。
 
試合内容も、プロレス的センスもいい為いい試合をするから、観客からの支持率も高い。
 
キャラクタとしてヤンキーキャラなので、基本的にはヒール的たたずまいではあるものの、根っこはまじめな所もあり、それなりに筋も通す子なんだろうという印象である。
 
インタビューや、試合後の発言、あるいはさまざまな記事を読んでも、プロ意識というのはかなり高い選手だと思っている。
 
それがなぜ今回こんな顛末に至ってしまったのだろうか、ということを考えると、良くも悪くも彼女のプライドが安川の言動やスタンスといったところを許せなかったのかもしれない。
 
それが悪い方向に転がってしまったことに寄るのかな、という気がしている。
 
 
この試合が決まったのは年明けの後楽園大会で、このブログでも記事を書いた大会であった。
 
その日、安川が岩谷から白いベルトを奪取して、新軍団を結成、その流れで世Ⅳ虎に挑戦を表明したのであるが、だれの目から見てもここで安川がこのベルトに挑戦するという状況は?だったし、必然性も何も感じられない展開に会場も戸惑っていた。
 
一方の世Ⅳ虎も奈苗との防衛戦の後に、テンションの違う安川が入ってきて、正直言ってあきれている印象だった。
 
両者の実力差は明らかだし、そのタイトルを奪取した試合自体仲間の介入によるところであったため、誰も安川がチャンピオンにふさわしいとは思っていないはずである。
 
ただ、プロレス的な視点でいえばああいうキャラクタがいることは面白いし、使いようによっては違う試合の色も出せるため必ずしもNoでもない。
 
とはいえ、団体として最高峰としているベルトへの挑戦ということを考えれば、安易なマッチメイクと言わざるを得ない。
 
 
団体の象徴であった愛川の引退後、世Ⅳ虎もそういった責任感を持ってやっていたことは試合を見ればよくわかる。
 
何せ引退試合の相手はほかならぬ世Ⅳ虎が受けたわけだし、スターダムも自分が好きだった風香の団体とあってそんな軽はずみなわけがないのである。
 
であるからこそ、非常におちゃらけて、自分の力ではなく仲間の手助けや反則によりベルトを取って、それで自分が必死に価値を高めようとしているベルトにおいそれと挑戦されたとあっては面白くないのは至極当然である。
 
それに、これは邪推かもしれないけど、どれだけしょうもないことをしても安川は人気があった。
 
勿論彼女も努力をしているし、いろいろ苦労しながら頑張っている訳であるが、ビジュアル的にも見栄えのする方にスポットが当たりやすいのは世の常とはいえ、面白くない感情はあったのではないか。
 
まして調印式でもそうした調子は変わることなく、また当日の試合開始も、先にグーパンチを仕掛けたのは安川だったとか。
 
たまりにたまったフラストレーションが、一番最悪な形で爆発してしまった、というところなのではないかと思っている。
 
これでもっと精神的にもキャリアを積んだ選手であれば、それはそれとして試合に昇華できただろう。
 
しかし、世Ⅳ虎は言ってもまだ20である。
 
彼女にそこまでの度量はまだなくて、感情に押し流されてしまったのかなという感じである。
 
 
その意味でも、スターダムにとってはいろいろな課題を残した試合と言えるだろう。
 
会社として、選手のメンタル含めたマネジメントいかにしていくか、ということである。
 
プロレスはある意味では純粋は格闘技ではない。
 
ルールも、販促は5カウント以内であればという、あいまいなルールも存在する。
 
だからこそ、一歩間違うと容易に殺し合いにすら発展してしまう危険性もはらんでいるため、技術もさることながらメンタルの強さや成熟というのは非常に重要になってくる。
 
この団体は勢いはあるが、一方で選手のけがによる離脱も非常に多い。
 
それだけ選手一人一人は無茶をやっているということだろうし、未成熟なまま危険度の高い技をなまじできてしまうから更に注意しなくてはいけない部分もあるだろう。
 
 
単に世Ⅳ虎を業界から追放することでは何も解決しない。
 
それは彼女のためにもならないだろう。
 
どう采配するのかはこれからに注目だけど、この団体だけでなく、いずれどの団体でも問題になりうる要素を持っている気がする。
 
ここで失速してしまったら本当にもったいないから、なんとかうまく立ち回ってほしいものだ。