続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

覚悟とは?

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この頃一部で、極一部で話題になっていることがある。
 
独自路線を進んできたアイスリボン所属で若手有望株として方々のリングに参戦し、その上かわいくて市長の娘という話題性抜群のレスラー、世羅りさがデスマッチをやるとかやらないとか言っている、という話である。
 
私も詳しい経緯は知らないのだけど、何かの試合でひょんなことからハードコアルールのタッグを行うことになったのだが、負けの大小としてタッグチームの解散が課されていたとか。
 
その試合にあえなく彼女のチームが負けてしまったのだが、その敗因の一つとして指摘されたのが世羅が凶器(ラダーとかね)を使うことをためらった、つまりハードコアルールでありながらハードコアな試合ができなかったからだ!とパートナーに怒られて、「そんなことないです!」ということを主張したいがために、その対戦相手であったヤンキー2兆拳銃としても名高い木高イサミとのデスマッチを要求したのであった。
 
と、書いてみて改めてあまり意味が分からないわけで、傍から見ていれば一体どういう必然性で彼女が急にデスマッチ、すなわち蛍光灯とか釘とか使ったいわゆる大日系の試合をやらんと欲したのかがさっぱりわからないわけである。
 
彼女からすれば、タッグパートナーから「覚悟が足りない!」などと叱責されたことが納得いかず、ほな覚悟みせたるわ!とばかり息巻いてみて、その結論がハードコアよりもエクストリームなデスマッチで、となったらしい。
 
要するに感情論である。
 
その件でツイッターで木高、アイスリボン・藤本とやり取りがあって、ごく一部の話題なんですね。
 
 
ここで非常に関心したのは木高の対応。
 
どう考えても巻き添えを食っただけなのだけど、彼は極めて大人かつプロな対応であった。
 
感情論から巻き起こったデスマッチ要求に、なめんじゃねぇと正面から突き付けた。
 
彼の主張は至極まっとうで、覚悟=血を流したり皮膚が割ける行為をやることではない、というわけである。
 
ファンの間でも賛否はわかれており、わかったように「意思を尊重すんべき」という人と、「そんなの見たくない」という素直なファンとで分かれているが、やはり後者の方が多い。
 
なんやかんや言っても可愛らしい子なので、そんな子が血まみれになって傷だらけになる姿など、見ていて気持ちのいいものではない。
 
かわいいのなんの以前に女の子だしね。
 
別に男ならいいとかそういう話ではなくて、そもそもそんな風に血を流さないと見せられない覚悟などたかが知れれている訳で、いうなれば中学生の我慢比べと大差ない話である。
 
要はやせ我慢で、そんなものに金を払う価値はないのである。
 
藤本が反対する大きな理由の一つはそこにある。
 
勿論それだけじゃない、彼女なりの親心もあると思うけどね。
 
 
さて、ここでいう覚悟ってなんぞやということが重要なワケである。
 
既にふれたけど、プロレスファンがプロレスラーにみるものの一つに、痛みに耐える姿というのがあるのは間違いないだろう。
 
それがなければコントだし。
 
その痛みや苦しみに耐えぬいて勝つからこそのカタルシスがあるわけで、別に痛がっている姿が好きだというのとは少し違う(中にはそういう人もいると思うけど)。
 
で、覚悟の話だけど、かつて四天王プロレスと言われた小橋らのプロレスがなぜあそこまで指示されたかである。
 
単に過激だったからではない。
 
その先にきちんと勝利を見据えての戦いだったからこその感動である。
 
ただいたぶりあってへらへらしていたらそれこそただの変態だ。
 
プロレスで見せるべき生き様がそこにあるからこそ面白いわけである。
 
その生き様をどこまで見せつけられるか、たとえやせ我慢の世界だったとしても、観ている側が「もういいよ!もう立つな!」と思わず叫んでしまいたくなるような所にこそ覚悟があるわけである。
 
だって、プロレスにはタップもあれば3カウントもある。
 
負ける道はいくつもあるのに、それでも肩を挙げる理由は何?と言ったらば、それはもはや彼のプロレスラーとしての覚悟だけである。
 
 
では今回の世羅についてはどうか、ということなんだけど、先にも書いたようにデスマッチについては結局感情論的に止まらなくなっているだけにすぎず、彼女なりに覚悟を示す、という意気込みはあるのだろうけど、ベクトルがずれているように思えてならないわけである。
 
勢いがあるとはいえ、まだまだルーキーでしかない彼女の覚悟って何?と考えた時に、今回で言えば男子レスラーの攻撃を真正面から泣きながらでもうけきるだけで、伝わるものはいくらでもある。
 
どう考えたって木高の方が体が男子の中では細かろうがパワーも技術もあるんだから、その中で彼女なりにどこまで木高を真正面から追い詰められるか、それこそが覚悟じゃないかな。
 
ナイフできれば血が出るのは当たり前で、そんな姿をハイ覚悟です、なんて言われでも誰も何も感じない。
 
ただ見たくないと顔をしかめるだけである。
 
まして、今仮にデスマッチを本当にやったとしても、鏡を見るたびに一生消えない傷を目にするわけだから後悔しかしないだろう。
 
仮にインタビューなどで「後悔はしてません!」なんていったところで、そんな発言をする時点で後悔してんだろうなと思うしね。
 
 
幸い今回は木高がベクトルを変えて、藤本が明確にNOを突き付けたので通常のプロレスルールで、時間無制限で行われることになった。
 
その間のやり取りを観ても、明らかに感情論だし。
 
ただ、今回の一番の原因は件の試合のタッグパートナーだった成宮という選手の発言だけど、この成宮もプロレスラーとしての覚悟をはき違えているのだろうね。
 
それを若さもあって、真正面から受け止めてしまった世羅が止まらなくなってしまったというのか今回の話だろう。
 
その成宮は今回の騒動については特に言及がないらしいが、人を凶器で殴る覚悟=人を殺す覚悟ということだから、そんなものはいらないよ。
 
それを理解していることは大事だけど、誰がそんな残酷ショーを観たいものか。
 
其れこそ殴る一方で自分は受けないとか、そういうのを観てなら話はまた違うけど、寧ろ逆だからたちが悪い。
 
世羅よりも何よりも、この成宮という選手こそ問題だと個人的には思うけどね。
 
 
こういうところにやはりプロとしての意識は出るなと改めて思ったし、その意味では世羅はまだまだ未熟だから周りがきちんとサポートしてあげないといけないよね。
 
藤本は若い子ばかりの団体で対外的なアピールもしつつ、団体のトップとしてそういった事への対応もしているから本当に大変だと思うし、でもすごい選手だなと思う。
 
試合は華やかで観ていて楽しいしね。
 
ほんと、がんばってほしいよね、つっか。