続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

プロレスのプロレスらしい事態と個人的に思っていること

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この週末はプロレス的なトピックが、個人的には大きく2つあってよかったね。

 

週末と言いつつ昨日に偏ってはいるんだけど、まずは新日本プロレス両国大会。

 

 

いくつかの注目カードがあったわけだけど、特に旧来のプロレスファンにとって最注目は今年いっぱいで引退することになるライガーvs鈴木みのるの一戦。

 

正直このカードをドームまで引っ張ってくれてもよかったと個人的には思うくらいドラマのある試合だと思うんだけど、それはともかく前哨戦でもみのるがしきりにライガーを挑発し、ライガー自身もキャリアを総括するような自分を見せるなど、ファンとしても盛り上がる展開が満載だった。

 

新規のファンにとっては、なぜ急にヘヴィの鈴木みのるがJr.のライガーにこんなにからんでいるんだろうか?話題作り大変だな・・・とか思ってしまう人もいたかもしれないが、実は2人には大きな縁があり、特にみのるにとっては、特に今のみのるにとってはライガーは無二の恩人なのである。

 

今では国内の総合団体としては老舗なパンクラスというのがあるのだけど、みのるはこのパンクラスを作った1人である。

 

プロレスではない格闘技として打ち出した団体の中で、鈴木みのるは怪我をして以降勝てなくなって、精神的にもかなり追い込まれる事態になる。

 

そんな状況の中で引退も頭にちらついたわけだが、その時に頭を過ぎったのが「もう一回プロレスやりたいな」という思いだったとか。

 

そこで組まれたのが佐々木健介との試合だったわけだが、怪我を理由に直前になって健介が試合欠場を発表、この試合を一つのきっかけにと捉えていたみのるにとっては、死に場所も奪われた感覚になってさらに精神的に落ちてしまったと言う。

 

そんな時に、携帯に直接電話をかけてきたのが他ならぬライガーである。

 

ラ「なんであいつ試合しないんだ!?」み「知らないっすよ・・・」ラ「このままじゃ、お前新日本が逃げたと思うだろ?だったら俺がやってやるよ!」

 

直前であるにもかかわらず、パンクラスルールでの試合に臨むことに。

 

元々新日本時代から仲の良い先輩・後輩の関係にあったこともあったし、またライガーの新日本レスラーとしてのプライドもあっただろう、ほとんど準備もないのにかつての後輩のために飛び込んでいったライガーのまさに男気である。

 

この時のことをみのる自信「正直感動しちゃったよ」と語っているという。

 

 

その後のみのるの活躍は言うに及ばず、結果として50代になってもなお最前線を走るようなすごい選手な訳だが、ここまで彼が頑張る理由の一つは、この時の思いがすくなからずあるんだと思う。

 

ライガーにとってはみのるを救ってやろうなんていう思いはなかったかもしれず、どちらかといえば新日本プロレスが舐められてたまるか!という思いだったかもしれないけど、測らずもそれがみのるを救ったのである。

 

その試合の後のやり取りをフックに前哨戦を繰り広げてきているので、その辺りは割愛するが、いずれにせよこれまで明確にその恩を伝えていないという思いがみのるにはあったんだろう、それが試合後のあの座礼につながったようだ。

 

私は久しぶりにプロレスの試合でマジで泣いたよ。

 

家で新日本プロレスワールドで見ていたんだけど、ヒールとして悪態を吐きまくっているみのるが、試合中は絶えず対戦相手のライガーを鼓舞しまくって、明らかに力の差があるにもかかわらず一切手は抜かない。

 

そんな試合の後に、意を決するように一礼する姿なんてみたら、ここにプロレスというジャンルの特異な感動があると思うわけである。

 

試合前に、Twitterでも「けじめ」という言葉を使っていたんだけど、彼にとってのそれはこうしてきちんとお礼をいうという行為であるとともに、試合を通じて伝えたかったのは「あの時お前に救われた奴が、今もこうして最前線でやってるぞ!まだまだ俺は辞めないぞ!」というメッセージではないかと思うのである。

 

実際試合後のインタビューでも、言葉こそみのるらしさもあるにせよ、どこかそんな思いを伝えるようなものであったと思うし、その表情がよかったね。

 

トップ画像は週プロモバイルから拝借したんだけど、寂しさが滲み出ていて、それが何よりも物語っているだろう。

 

エンターテイメントとしてああだこうだと言われるけど、ここに繰り広げられるのはリアルな感情である。

 

虚実入り混じるからこそ滲み出てくる本質があると思っていて、この試合ではそれが非常によく現れていた。

 

プロレスは長い長い物語でもあるんですね。

 

ここから引退まで、ライガーの試合がどんなものになるかは分からないけど、せめて楽しんで引退していってほしいなと思うよね。

 

 

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二つ目は昨日も取り上げたスターダムで起こった事件、アイスリボンのジュリアの電撃来場である。

 

私はその後改めて知ったんだけど、やっぱりこれは彼女の完全な暴走みたいだね。

 

昨夜改めてアイスリボンからも事態についてのリリースがされていたけど、ジュリアが退団を申し出たのが13日、即日退団を求めてきたというが、すでに対戦カードも発表されている中で各所の調整も行わねばならないのは普通の会社と同じだ。

 

選手のわがままでもう辞めます、なんて通用しない。

 

怪我などの退っ引きならない事情があるなら別だが、彼女は至って元気、ていうか単に自己都合で辞めますと言っているだけなので、そりゃ筋が通らない。

 

まして会社側としては、退団自体は受け入れる方向で調整していくという話をしているわけだから、かなり良心的だと思う。

 

何せキャリア2年程度、ビジュアルも綺麗で華もあるのは彼女の才能の一つだとしても、最近の成長ぶりは間違いなく彼女にチャンスを与えてきた団体の後押しがあってのことだし、その点についてはきちんと礼儀で持って帰すべきである。

 

それをきちんと精算もせずに勝手に他団体に上がって入団します、ではダメである。

 

元々テキーラ沙耶の引退でもって彼女も退団をしようと決めていたんだろうとは思うけど、仮にそうだとしてももっと手前のところで話は通しておかないとダメだろう。

 

ただ、ひょっとしたら沙耶はこの件を多少なりとも把握していたのかなという感じだ。

 

「信じてたんだけどなぁ」という短いコメントしか出していないが、それが物語っているのではないだろうか。

 

スターダムサイドがどういう認識だったのかは分からないが、おそらくジュリアが嘘とまでは言わないが、甘い見通しで「14日までに辞めて後楽園に行きます」という約束をしていたのだろう。

 

だからこそ13日付での退団を押し通そうとしたんだと思うし、スターダムもわざわざあの場を用意したのだろう。

 

 

いずれにせよ、これは結構揉めそうだし、ジュリアのキャリアにとってもどこまでプラスになるのか、少なくともこのリスタートは結構な批判の中で始めることになるだろう。

 

ただ、これまでアイスリボンが見せてきたプロレスというのが、良くも悪くも感情も全てリングで曝け出す、というスタイル。

 

それに対してつっかも出しすぎるくらい出している、と表現するくらいだから今回のゴタゴタも捉え方によってはアイスリボン のプロレスと言えなくもない。

 

社会人として褒められた行動ではないし、単純にダメだと思うんだけど、身勝手なファン目線で言えばそれはそれで楽しんで見てしまっている。

 

示しをつけるためにも、アイスリボンサイドはそれなりの措置は取るべきだと思うけど、いずれにせよどうなるかの顛末は見守りたいところだ。

 

ただ、かわいそうなのはテキーラ沙耶かなと思う。

 

引退試合も台風で流れてしまって再調整はまだこれから、そんな最中でタッグパートナーとして多分一番可愛がっていたであろう後輩のジュリアがこんなことになってしまって、ますます暗礁に乗り上げてしまった印象である。

 

引退興行は気持ちよく終えてほしいと私は思っているので、そこに暗雲はなしにしてあげてほしいよね。

 

 

プロレスは相変わらず特殊なジャンルなので、理解できない人には理解できないかもしれない。

 

だけど、その本質はある意味どのエンタメスポーツよりも実社会との対照が見られるとも思っている。

 

虚実入り混じるからこそ浮かび上がる本質もあって、だから面白いのである。

 

いろいろなストーリー、キャラクタがあるんだけど、そこで繰り広げられるのはよくある人間模様である。