プロレスラーの引退にあたっては、誰とやるのか、どんな試合になるのかというのは結構重要である。
どんなスポーツでも終わり方は大事だど思うけど、プロレスは試合でただ戦うだけではなくて、そこでなにを伝えるかが重要な側面もある。
だから、例えばタッグでやるなら組む相手は往年のライバルか長年のパートナーである場合が多いし、対戦相手には後輩や未来を託すような相手を選ぶ場合が多い。
特に女子はその傾向が強いかなと思うんだけど、このところベテラン層の引退がちらほらあって、豊田真奈美も今年限りで引退を表明しており、今は引退ロード的な試合をしている。
私は所謂女子プロ全盛の時代から見ているわけではなく、その次の世代くらい、桜花とかイオとかが新人としてデビューしたあたりから見ているので、既に豊田はレジェンド的な扱いになっていた。
飛翔天女と謳われた面影は少なくとも外見的にはなかったが、あの体でも割とよく飛んでいる。
既に第一線ではなく一歩引いたところでやっている印象だったので、そうした試合ぶりを見てはいい意味でのベテランとして存在している印象であった。
特に最近ではアイスリボンによく参戦しており、なかでもつっかとつくしを可愛がっていたようだった。
女子プロの伝統としてなのかわからないが、使っていた技を継承して行くという文化がある。
オリジナルホールドの多い女子ならではの文化だと思うけど、彼女の得意技のスープレックス二種はつっかとつくしに継承されていた。
ちなみに、ローリングクレイドルは確か雪妃にだったかしら。
ともあれ、自身の代名詞と言える技を継承するくらいだから、それだけ目をかけていたのは分かるし、当然引退試合でもパートナーとしてから相手としてかは明言されてないまでも、カードに組み込まれることは決まっていた。
ところが、先日そのつくしが障害沙汰で警察に逮捕されるという事態が。
結局不起訴になったのでそこまで大事には至らなかったものの、団体としては無期限停止処分を下しており、今は裏方として働いているらしい。
無期限停止ということなので、いつ復帰してもいいわけだが、それが豊田の引退興行では、なんて事を多くのファンは考えていたわけだが、当の豊田がそれを完全否定、引退試合のカードからは外す事を明言し、会場に来ることもまかりならん、と行った発言をしたのである。
彼女の主張は至極真っ当で、さすがだなと思ったものだ。
まぁ、見る側からすれば出してやればいいじゃないか、と思うのだけど、一方で今後のつくしの人生を思えば、本当に痛い思いをしておくことも重要なのかもしれない。
ファンは暖かく復帰を迎えるだろうし、この謹慎期間も決して穏やかな日々ではないだろうけど、ちょっとのことでチャンスを不意にすることは人生にはいくらでもあって、まして一般社会でならなおさらであるところ、プロレス始めショービズの世界は良くも悪くも寛容なところがある。
それを良しとしなかった豊田の判断は、いろんな面ですごいなと思った。
つくし自身もそれまでには復帰して、豊田の引退試合に出たいという思いもあっただろうから、この発言をどう受け取ったのかである。
一生ものの後悔を覚えるだろうし、だからこそ今後のプロ生活では大きなきっかけになるといいよね。
ともあれ、引退興行にはせっかくなので行こうと思っている。