続・論理プロレス論考

観戦の感想、レスラー個々、そしてプロレスを見る私と、様々な角度からあれこれプロレスを語りたいブログ

人生を示すもの

イメージ 1

 

プロレスの面白さってなんだろうと言うことを、人と話をするたびに思うんだけど、女子プロレスに関していえば、アイドルを応援するのと同じ心理があるかもしれない。
 
アイドルといっても昔の松田聖子などの時代のアイドルではなく、言って見ればAKB以降のアイドルの方である。
 
素人が少しずつ成長してスターになっていく過程をこそファンは応援するわけで、私も男だからわかるけど、どうせなら可愛い女の子を見ていたい。
 
お父さんの気持ちってこんな感じだろうか。
 
何もできなかった子が立派にステージで輝く姿はなかなかグッとくるだろう。
 
 
最近女子プロを見ていて、悔しいがグッとくる瞬間がある。
 
良くも悪くもプロレスでのプロデビューは年々敷居が下がっており、こと女子においてはそれが顕著だ。
 
次世代のスターがなかなか出てこないし、出て来たと思ったらさっさと辞めちゃうし、そんな状況が続けば功を焦るのは致し方ないところもあるだろう。
 
賛否はあるもののそれも含んで応援しているのが今の女子プロファンの大半かもしれない。
 
私も気がつけばそうなっているし。。。
 
 
さて、そんな状況が後押しして小さなパイを取り合っている女子プロ界の中で、私が一番面白くて見ているのがこのブログでもちょくちょく出て来ているアイスリボン
 
純粋にプロレスの技術でいえば里村明衣子紫雷イオの二人であるのはもはや異論はないだろう。
 
この二人のカードには金を払う価値がある。
 
とはいえ、プロレスの価値はそれだけではない。
 
その点も含めると私が一番好きなのはアイスリボン藤本つかさである。
 
この子は本当にすごい。
 
このこと言いながら年上なんだけど、結婚して応援したいくらいだ。
 
そんな彼女が率いる団体がアイスリボンなんだけど、この団体は非常に特色が強い。
 
下は中学生から、上は40過ぎのベテランまで参戦する年齢的な幅の広さもさることながら、所属レスラーの経歴も非常にバラエティに富んでおりそんな人生の色々が見えるのも面白い。
 
たとえばテレビにも出た元キャバ嬢のハーフの子や、元バーの店長、北海道から単身赴任できたママさんに、最近その娘もデビュー。
 
あるいは長崎の医者の娘に市長の娘、地下アイドルみたいなやつまで実に様々。
 
それを束ねる藤本つかさ、通称つっかも出自は元アイドル、今では選手権取締役として八面六臂の活躍だ。
 
プロレス技術もさることながら、団体を母のように支える運営も実に素晴らしい。
 
本当に頑張って欲しいと思っている。
 
 
で、そんな団体でもひときわ人気もありながらイマイチ突き抜けられないのが雪妃真矢というレスラー。
 
フェリス女学院卒業で元銀行員というハイキャリアながら、ある日プロレスやるといって家を飛び出した変わり種である。
 
しかも歌が超上手い。
 
美人かどうかは個人の好みもあるだろうけど、スタイルもいいし綺麗だし、華もあるので今では中心選手の一人で、タッグのベルト王者でもある。
 
とはいえ、少し前まではビジュアルが話題にはなるが試合自体はパッとせず、正直あまり面白くはなかったんだけど、チャンピオンになって以降は試合も自身に溢れて力強さもあり、女子にあっては長身なのでそれを生かした試合で徐々にいい感じになっていた。
 
しかし、彼女は今悩んでいるらしい。
 
その悩みの理由は「自分には何も特徴がない」という自己認識に基づいている。
 
彼女がそう言う理由もわかるけど、一方ではそんなことはないだろうというところもある。
 
難しいのは、彼女がそう思っているという事実そのもので、だからこそそれをつっかは突っ込んで色々のカードを組んだりしている。
 
 
多分、同じような悩みを持ってしまう人は少なくないと思う。
 
客観的に見ればちゃんと評価もされているし優秀で存在感もあって、この人はすごいと思わせるものをちゃんと持っているんだけど、本人にとってみればそれは認められるようなものではなくて、他の人と比べた時に自分を卑下して自信をなくしてしまう、ということは結構あると思う。
 
この問題が難しいのは、誰かに「あなたは大丈夫」と言われたところで何も解決しないことである。
 
問題は自己認知にあるわけだから当然ではあるけど、だからこそ出口もない。
 
だが、この手の問題って実社会ではその人の問題としか思われないし、なんならそういうことを思っていることすら周りには伝わらないし伝えないことが当たり前である。
 
しかし、プロレスではそれを全て曝け出させる。
 
そこに残酷さがあるし、反面だからこその面白みがある。
 
そうして公衆の面前にさらされることで、ファンからの「そんなことないよ」という言葉をよりどころにしてやっていくのも一つだし、自分なりに何かを見つけようとあくせくしていくのも一つだ。
 
どっちが正解でもないし、どっちがダメということでもないわけだけど、その過程を試合を通して示していくのもプロレスなのである。
 
 
今の新日本プロレスは、そうした個人的なものを排してもっと大きなストーリーを持って動いていることがこれだけの人気を博している理由だと思うけど、一方でそうした個々人のごく個人的なストーリーも見えてくるのがプロレスというジャンルの面白さである。
 
その問題意識が小さいほど大きな波及力はないわけだけど、だからこそ刺さるところもある。
 
アイスリボンが面白い理由は、そういう小さなストーリーが積み重なって大きなものになっているし、それを積極的に出している点である。
 
女子プロなのでファンの割合は圧倒的に男の方が多いわけだけど、実は女性の方が楽しめる要素がたくさんある団体でもあると思う。
 
別にアイスリボンだけに限らず、今の女子プロレスラーって本当にいろんな子がいるから、普通にOLをやっている人でも何かを感じられる相手がいるんじゃないかと思っている。
 
プロレスが見せてくれるのは、わかりやす派手な技の応酬だけはなくて、人生に置ける痛みもリング上でさらけ出すことである。
 
個人的にいいレスラーってそういうものだと思っているしね。
 
 
美人でスタイルも良くて頭も良くてストーリーもある雪妃真矢、それでも悩める彼女が今後どういう成長を遂げていくのか、それだけでも見ていく面白みはあると思うので、ぜひ機会を作ってのぞいて見て欲しいですね。
 
1回す気になったらなかなか嫌いにはなれないのがプロレス、それはあたかも人間関係そのものだと、個人的には思っている。